年金手帳でお金を借りれる年金担保貸付制度とは?
年金担保貸付制度とは、国民年金や厚生年金の年金受給権を担保として融資することが国の法律で唯一認められた公的な制度です。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)がこの制度の唯一の実施団体として審査や融資などの事業を行っており、平成30年度では約73000件の融資実績があります。
ただしこの年金担保貸付制度は令和4年3月末で新規申込を停止しています。
令和4年3月末までは申込をしてお金を借りることはできます。借入後の返済は令和4年3月末以降になっても大丈夫です。
年金担保貸付の申込停止後の代替措置として生活福祉資金貸付制度でお金を借りれるようになる予定です。
年金担保貸付制度の概要と特徴
資金使途 | 保健・医療、介護・福祉、住宅改修等、教育、冠婚葬祭、事業維持、債務等の一括整理、生活必需物品の購入 |
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融資額 | 以下3つの要件を満たす範囲内の金額
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金利 | 年率2.8%(平成30年10月3日現在) |
返済 | 年金支給機関より直接返済。1回1万円以上1万円単位 |
担保 | 年金受給権を担保とし、年金証書を取扱金融機関に預け、年金証書預り証を受け取る |
保証 | 連帯保証人が必要。公益財団法人年金融資福祉サービス協会の保証も利用可能。 |
申込先 | 年金受取の金融機関店舗(ゆうちょ銀行、農協、ろうきんを除く) |
年金担保貸付は資金使途の幅広さと、受給する年金から直接差し引かれて返済が進められる点が特徴です。
ただし生活資金としての資金使途は認められておらず、生活費のために借りることはできません。
また一度借りると返済が完了するまで追加で融資を受けることはできません。
年金担保貸付は債務等の一括整理にも利用できます。滞納した家賃や光熱費、税金等の支払いに充てられるものですが、消費者金融や銀行カードローンの借金の借換にも利用できます。
年金担保貸付でお金を借りれない人
年金担保貸付は年金手帳を持っている人なら誰でもお金を借りれるわけではなく、中には借りれない人もいます。
- 生活保護を受けている方
- 年金支給が全額停止されている方
- 現況届または定期報告書が未提出もしくは提出遅延している方
- すでに年金担保貸付を受けている方
- 反社の方、反社に類する行為を行う方
- 年金担保貸付利用中に生活保護を受給し生活保護廃止から5年未満の方
- 平成26年12月1日以降に借入して繰上返済し、融資決定時の完済予定日を過ぎていない方
- 独立行政法人福祉医療機構の審査に落ちた方
年金担保貸付は生活保護を受けていると借りれません。
またすでに年金担保貸付でお金を借りている人は追加で借りることはできません。
上記の項目に該当しない方でも、年金担保貸付は生活資金であったり、旅行費用などの資金使途では借りられません。
生活資金としては借りられませんが、家具や家電の購入は「生活必需物品の購入」にあたるので、お金を借りることができます。
年金担保貸付の返済は?
年金担保貸付で借りたお金の返済は受給する年金からの天引きで行われます。年金受給額から返済額を差し引いた金額が年金受取口座に振り込まれます。
毎回の返済額は1万円から年金受給額の1/3以下の間で1万円単位で自由に設定できます。
最低返済額が1万円なので、借入期間中は年金の実際の受取額が毎回1万円は確実に少なくなります。
年金担保貸付の利用期間中は年金受給額の手取りが少なくなるので、家計のやりくりには注意が必要です。
年金担保貸付の返済期間中は年金振込通知書が届かない
年金担保貸付では年金証書は取扱金融機関が預かり、代わりに金融機関から年金証書預かり証を発行してもらいます。
返済期間中、年金は日本年金機構からいったん取扱金融機関に振り込まれるため、日本年金機構から毎年届けられる「年金振込通知書」が手元には届かなくなります。
年金担保貸付でお金を借りている間に年金振込通知書が必要な場合は、日本年金機構に
- 年金担保貸付を受ける前の年金振込通知書の再発行
- 支払額の証明となる年金振込通知書とは別の様式の書類の発行
のどちらかを依頼することができます。
ねんきんダイヤルかお近くの年金事務所に問合せましょう。
参照:年金Q&A|日本年金機構
返済が厳しいときは1回だけ貸付条件を変更できる
年金担保貸付は年金から天引きされるような形で返済が進んでいきますが、手元に残る年金だけでは生活が厳しい場合もあり得ます。
返済が厳しい場合は、借入期間中に1度だけ貸付条件を変更することができます。
変更内容は
- 返済期間を貸付日から3年に延長する
- 定額返済額を1000円単位で決められる
の2点です。
返済期間が3年に延長されるのは、実質的には返済期間が少し伸びるだけなので、それほど返済が楽になるわけではありません。
しかし定額返済額を1000円単位で決められる方は、例えば本来なら22000円の返済でよかったところ、1万円単位という都合で毎回3万円の返済になっていたのが、22000円の返済に抑えられることになり、毎回の返済額が減ります。
これでやりくりが楽になる方も多いはずです。
とはいえ返済総額も利息の支払いも減るわけではなく、毎回の支払いが少しラクになるという程度です。返済自体が免除されることはありません。
参照:やむを得ない事情により返済が困難となったかたの貸付条件変更について|WAM
年金から介護保険料等を差し引かれている方は借入後は自身で納付を
年金から介護保険料などを差し引く形で納付している方は、年金担保貸付を受けている期間中、年金から差し引く納付ができなくなります。
返済期間中は自分で市役所・役場に赴いて保険料等を支払うことになります。
各種保険料の支払いについても注意して家計を管理する必要があります。
年金担保貸付の返済は年金からの天引きなので、最初の手続きはやや面倒なところもありますね。
年金担保貸付の申込先
申込は年金受取ができる銀行や信用金庫等で「独立行政法人福祉医療機構代理店」の掲示がある店舗となります。
ゆうちょ銀行と農協、労働金庫(ろうきん)では年金担保貸付の取扱いをしていません。
ゆうちょ銀行、農協、ろうきんで年金の受取をしている方は、日本年金機構に「年金受給権者受取機関変更届」を提出し、受取金融機関を年金担保貸付を取り扱う金融機関に変更する必要があります。
申請から融資までの流れ
独立行政法人福祉医療機構年金貸付課、または取扱金融機関(独立行政法人福祉医療機構代理店の掲示がある店舗)に融資の相談をする
取扱金融機関で必要書類を提出して申込手続きを行う。ゆうちょ銀行、農協、ろうきんで年金受取をしている方は受取先の口座を取扱金融機関に変更しておく。
独立行政法人福祉医療機構での審査。申込から審査結果の連絡を受けて融資実行までおよそ4週間かかります。審査結果は取扱金融機関から電話で連絡がきます。
審査で決定した融資実行日に指定した預金口座に貸付金が振込入金されます。
年金担保貸付は申込から融資まで約4〜5週間程度かかります。手続きには時間がかかるので、この先に必要となる出費を見越して早めに借入を申込みましょう。
年金担保貸付の申込時の必要書類
- 借入申込書
- 年金証書
- 現在の年金支給額を証明する書類(年金振込通知書、年金決定通知書等)
- 印鑑・印鑑登録証明書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、障害者手帳、パスポート等)
- 資金使途の確認書類(見積書、請求書、領収書、カタログ、パンフレット、債務の残高証明書等)
- 連帯保証人の同席もしくは信用保証制度申込書類
このほかに連帯保証人を立てる場合は、連帯保証人の方の本人確認書類、印鑑・印鑑登録証明、申込者との続柄がわかる書類(住民票等)、収入証明書類(源泉徴収票、確定申告書等)が必要です。
さらに申込時に連帯保証人の方にも一緒に取扱金融機関まで来てもらう必要があります。
年金担保貸付の場合、連帯保証人は兄弟や子供がなることが多いですが、身内から連帯保証人を立てるのが難しい場合も少なくありません。
連帯保証人なしでも、公益財団法人年金融資福祉サービス協会の信用保証制度を利用することで申込は可能です(保証料が必要)。
年金担保貸付の申込の仲介・斡旋業者に注意!
年金担保貸付制度の申込を仲介・斡旋することで手数料を搾取しようとする悪質業者がいるようです。
年金担保貸付の申込ができるのは「独立行政法人福祉医療機構代理店」と掲示している銀行や信用金庫などの窓口だけです。
仲介・斡旋業者を利用したところで融資条件がよくなる、審査が甘くなるといったことは絶対にありませんし、法外な手数料を請求されたり、個人情報を取得されて不正利用されるなどの恐れがあります。
申込の手続きは面倒かもしれませんが、必ずご自身で「独立行政法人福祉医療機構代理店」となっている銀行や信用金庫等の窓口まで行ってください。
福祉医療機構以外の年金担保貸付は違法業者です!
年金担保貸付は独立行政法人福祉医療機構だけが法律で唯一認められ、扱うことができる貸付制度です。
それ以外の業者が年金証書を預かったり、年金を担保にお金を貸すことは法律で認められておらず、そのようなことをする金融業者は全て違法業者です。
また、年金担保貸付制度では債務等の一括整理という資金使途も認められていることから、年金受給者に法定利息を大幅に上回る金利でお金を融資し、返済のために年金担保貸付でお金を借りてくることを強要する業者もいるようです。
年齢的に働いてお金を稼ぐのが難しい状況で、年金という老後の糧を奪われたり、年金からの返済で困窮してしまうようなことは、絶対にあってはなりません。
年金担保貸付制度は令和4年3月末で新規受付の停止が決まっていますが、廃止が議論された背景には返済による老後の生活困窮につながりかねない危惧もありました。働いてお金を得るのが難しい状況です。年金担保貸付の利用そのものにも慎重になった方がよいでしょう。
年金を担保にしたり、年金担保貸付制度を悪用しようとする違法業者には十分注意してください。